【第38回 介護福祉士試験】介護の基本・第8問|生活史を尊重した声かけ
第38回(令和7年度)介護福祉士国家試験「介護の基本」第8問を解説します。事例問題を通じて、利用者の「過去・現在・未来」をひとつなぎにして捉え、生活史を尊重するコミュニケーションの本質を学びます。
第38回 介護福祉士国家試験 <介護の基本> 第8問
📝 事例の条件(出題情報)
- 対象者: Aさん(91歳、女性、要支援2)
- 生活史(過去): 長年診療所の医師として地域医療に貢献してきた。婚姻歴はなし。
- 現在の状況: 診療所敷地内の自宅で3匹の猫と暮らしている。歩行に不安を訴え、訪問型サービスを週2回利用。人の世話になることに慣れていない様子もある。85歳で引退後も、近隣にはAさんを慕う地域住民が多く、定期的に自宅を訪ねて見守りをしてくれている。
- 本人の希望(未来): 最期まで自宅で暮らすことを望んでいる。
次の記述のうち、Aさんの生活史を尊重した訪問介護員(ホームヘルパー)の声かけとして、最も適切なものを1つ選びなさい。
選択肢
- 「3匹の猫は、今後は地域の皆さんに預けましょう」
- 「近所の方の力も借りて、この地域で暮らしていけるように考えていきましょう」
- 「介護を受けることにも、今後は慣れてください」
- 「医師であったことは忘れて、私たちを頼ってください」
- 「一人暮らしで自宅で最期を迎えるのは、不安がありますよね」
この問題は、利用者の「生活史(これまでの人生の歩み)」や価値観を尊重し、本人の望む生活をどのように支えるかという、介護の基本姿勢を問うものです。地域住民との良好な関係性(社会的資源)を活かしつつ、本人の「自宅で暮らしたい」という意向を支える提案である選択肢2が、生活史を尊重した対応として最も適切です。
📌 講師のぼやき:3つの視点をセットで見る
「その人の人生ごと支えるのが介護。過去を否定せず、希望をそのまま受け取る。」
介護の現場では、利用者さんの「過去・現在・未来」を3つセットで見ます。
Aさんの場合、以下のように整理できます。
- 過去(生活史):医師として地域に貢献してきた誇りある人生
- 現在:猫と暮らし、地域住民に慕われている
- 未来(本人の希望):最期まで自宅で暮らしたい
この3つを分断せず、一本の線としてつなげて支えるのが選択肢2の言葉です。
ところで、こんな介護職はいませんか?
ADL(日常生活動作)だけを見て「この状態では施設しかないですね」と、まるでケアマネのように判断してしまう人。
それは介護職の視点ではなく、サービス調整の視点です。
❌ 他の選択肢が不適切な理由
| 選択肢 | 外れる理由・解説 |
|---|---|
| 選択肢1 「猫は皆さんに預けましょう」 |
大切な家族である猫を手放す提案は、現在の生活の基盤を否定するものであり不適切です。 |
| 選択肢3 「介護に慣れてください」 選択肢4 「医師であったことは忘れて」 |
Aさんがこれまで築いてきたプライドや人生、そして支援を受けることへの率直な戸惑いを軽視する言葉になりかねず、心理的苦痛を与える可能性があります。 |
| 選択肢5 「自宅で最期を迎えるのは、不安がありますよね」 |
本人の不安に寄り添う姿勢自体は介護の基本として重要ですが、この文脈では「自宅で最期まで」という本人の強い意思に対し、やんわりとした否定(「一人では無理ではないか」というニュアンス)として伝わってしまう可能性がある点に注意が必要です。 |
💡 解答の視点整理
この問題で問われているのは、利用者の人生を断片的な「今の状態」だけで捉えず、これまで歩んできた人生(生活史)と本人が望む今後の暮らし方の両方に目を向け、それを支える声かけができるかという視点です。
利用者支援を考えるときは、次の三つを常にセットで捉える習慣が有効です。
- これまでの歩み(生活史):誇りや価値観の土台になっている
- 今の状況:できること・困っていることの両面
- 本人が望む今後:その人が決める権利を持つもの
介護職に求められるのは、状態の良し悪しだけで方向性を決めることではなく、本人の人生と意思を起点に、どう支えるかを考える姿勢なのです。
現場の「生きた視点」を学び、確かな実力を。
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